おままごと 拓磨×珠紀

「もぅ!いい加減にして欲しいよね!」
「まぁ…そういうな」
「だって!これで何度目だと思ってるの?拓磨はデートしたくないの!!」
「そ…そりゃ」

もう何度になるかわからないほど、デートをあの人に邪魔されている。
色々対策は練ってみてはいるのだが、一向にうまくいかない。
このままでは拓磨とつきあっているのか、あの人とつきあっているのかわからない。

「とにかく!今週こそは何とかしますからね!」
こう私は宣言して席に着いた。
こうして相談できるのも授業の合間の短い休み時間のみ。
クラスの皆が聞き耳を立ててるのは知っているけれど、そんな事構っていられない。
あの人の邪魔は昼休み、登下校時問わずなのだから。
おまけに家でも美鶴ちゃんが内偵しているのではないかと私は疑っている。


「あなた、あ〜ん」
「おい。こんなことまでやらなくても」
拓磨が頬を染めながら囁く。
「いいの!絶対これで敵は食いつくはずよ!」
私も囁き返す。これも作戦と思っていながらも結構嬉しい。

日曜日、境内の裏手の森でゴザを広げていちゃいちゃとお弁当を食べる二人。
これで絶対敵は食らいついてくるでしょ。

「おい」
来た!私は嬉しいのを我慢して、ちょっと迷惑そうな顔をして振り返る。
「な、なんですか?真弘先輩」
「真弘先輩様がおまえの弁当をたべてやろうと思ってな」
ニヤリと笑う真弘先輩。
「え〜。真弘先輩も仲間に入りたいんですか?」
「なーんだー!?その迷惑そうな顔は?」
迷惑そうじゃなくて、迷惑なんですけど?先輩。

「どうする?たくまぁ?」
私は拓磨の頬を指でつつく。
拓磨はやりすぎじゃないか?と目で訴えてくるが軽く無視する。
諦めた拓磨は
「ま、いいんじゃないか…」と力なく呟く。
「拓磨がそう言うんならいいけど…じゃ、真弘先輩はココに座ってください」
と、拓磨と私の中間を指し示す。
「そ…そっか。悪いな?なんか邪魔するみたいで」
ぜーんぜん!!悪いと思っていないくせに!
真弘先輩は喜色満面で私達の真ん中に陣取る。

作戦開始!私は拓磨に目で合図を送る。
「じゃ、真弘ちゃんも御飯食べまちゅか?」
「はあ?」
あ然とする真弘先輩に向かって拓磨も
「おい、真弘は御飯よりもオムツを変えて欲しそうだぞ」
「はああ?」
良からぬ雰囲気を察知してか逃げようとする真弘先輩の腰を拓磨が捕まえる。
「あら?真弘ちゃんおもらししちゃったんでしゅか〜
 ママが今綺麗にしてあげますからね〜」
私は真弘先輩のバックルに手をかける。
「いや、待て!待て!俺が悪かったーッ」
絶叫とベルトを残して先輩は去っていった。

かくして真弘先輩は二度とデートの邪魔はしなくなりましたとさ。



2006.07.23