◆一章二日目(5)◆

何か資料があるとすればここしかないだろうと、蔵に来た。
家にあった目星い鍵をすべて持ってきたが、やはり反応なし。
拓磨がしばらく扉相手に格闘していたが、びくともしなかった。

「開かない扉はない」そう祐一先輩は言うが…
「私もそう思います。ですがこれは何かの仕掛けがなされているのかもしれませんね」
頼みの大蛇さんも駄目か…
これは諦めておばあ様に聞きに行くしかないのかと思っていたら。

「扉に手を当てて、こう言え。『主来たれり』」私にしか聞こえないような囁きだった。
真弘先輩?
真弘先輩に目で促され、試してみる。

変化なし。首を横に振ると…

「押してみろ」
次の瞬間。扉は音を立てて開いた。

「これは結界ですね。鍵はフェイクですか」大蛇さんが呟く。
「そうだ。玉依の血による結界。同じ血筋でなければ決して開けられない」
「真弘先輩なぜ…」

私の問いには答えずに真弘先輩は蔵の中に消えた。
私達は顔を見合わせ、続いて蔵の中に足を踏み入れた。

蔵の中は明り取りの小さな窓からさす光のみで薄暗い。
古びた書物が棚や床に所狭しと置かれている。
こんな事ならば懐中電灯でも持ってくればよかった…

薄暗い中、書かれた文字さえ良くわからない書物を眺めていたら10分もすると目が痛くなってきた。
「皆さん、今回は適当に見繕って再度探索に来ませんか?」
自分から言い出して早々にリタイアするのは少々決まり悪かったが、
蔵の入り方もわかったので、いざとなれば一人でも来られると思い提案してみると皆賛同してくれた。



2006.07.26