◆一章二日目(4)◆

皆そのうち追いついてくるだろう、という祐一先輩の言葉で神社へ向かう。
机の上のメモ書き換えてこなかったことがチラっと頭の隅をよぎっては去っていった。

先輩の印象は昨日の出会いからは大分良くなっている。
自分にも引け目がある所為だろうか。
私はいつになく饒舌だった。
「そういえば先輩の趣味って何ですか?」
「…俺は、日の当たるところでぼーっとしてるのがいい。」
思わず噴出してしまい、怒ってないかな?とチラっと先輩の横顔を盗み見る。
すると先輩と視線がぶつかってしまい、笑顔で誤魔化す。
怒ってはいないよね?

「お二人ともおかえりなさい。」背後から声をかけられる。
「こんにちは、大蛇さん。」
「楽しそうですね。」
「ええ。今、先輩の趣味の話を伺っていたんです。大蛇さんの趣味はなんですか?」

「私ですか?そうですね。強いて言うなら茶を少々」
…イメージ通り。
「茶道をなさるんですか?」
「いいえ。そんな大仰なものではありません。
 紅茶でも緑茶でも集めるのが趣味ですね。」
「ああ。それは俺も馳走になったことがある。あれはいい茶葉でした。」
「それはどうもありがとう。」
知らず物欲しげな顔になっていたのかもしれない。
「そのうちにあなたにもご馳走しますね。」と付け加えられてしまった。

その時、背後から突風が吹いた。

慌ててスカートを押さえ、振り返ると息を切らした拓磨と真弘先輩…
「ど、どうしたんですか?二人とも。」という私の問いは無視して
「お、俺の趣味はクロスワードパズル…」
「お、俺様の趣味はバイク…」
二人はそれだけ言うと座り込んでしまう。

なにかちょっと恨めしそうな視線だったのは気のせいかな?

「ところで。あなたの趣味はなんですか?」大蛇さんは拓磨を引き摺りながら。
「私の趣味は…」と私が言い終わる前に。

「おまえ、その趣味はちょっと…」祐一先輩は真弘先輩を引き摺りながら。
「え?私まだ何も言ってませんよ?」
「…オサキ狐が教えてくれた。」
「な?」
「ニー!」何時の間にかオサキ狐は祐一先輩の肩に乗っていた。



2006.07.26