◆一章一日目(6)◆ |
熱気に酔った私は、そっと縁側から庭へと抜け出した。 火照った頬が秋の夜風に晒され心地よい。 見上げれば満天の星。 「クシュン」 クシャミで自分が思いのほか長居をしてしまった事に気付く。 そこにふわり、と肩に暖かいものがかかる。 振り返ると 「大蛇さん。」 「…冷えますよ。秋もそろそろ半ばですから」 「ありがとうございます。 空が綺麗で…ちょっと長居をし過ぎたみたいです。 折角肩掛けをお借りしたことですし、もう少し庭を見ていますね」 私もお付き合いしますよと、隣に並ぶ大蛇さん。 「あの。伺ってもいいですか?」 ええ、私で答えられることならばと大蛇さんが微笑む。 「守護五家とは何なのですか?」 私の問いに大蛇さんはゆっくりと語り出す。 「守護五家の守護者は今は四人しかいません。 あとの一人は事情があり、この村にはいないのです。 玉依の血は【鬼斬丸】の封印を守る最も重要な存在だと、そのような話はもう?」 私は頷く。 「【鬼斬丸】は二つの封印によって守られています。 一つは玉依の血。もう一つが【宝具】と呼ばれる五つの封印。 【宝具】はそれぞれ封印域と呼ばれる特定の場所に配置され、 我々は契約に従い【宝具】と玉依の血を守る為にこの地に根付きました。」 自分の与り知らない過去の契約に従い、自分の人生を決められてしまって? 本当にあなたはそれでいいの? 私の問いは声にはならなかったが、顔に出ていたようだ。 「私達には少しずつ異形の血が混じっています。 鬼崎君にも、鴉取君にも、狐邑君にも、私にも。 私達は厳密な意味で人間じゃない。 納得する、しないではないのです。 私達はそのために存在しているのです。」 私にはどこかその言葉は大蛇さんが自分自身に言い聞かせているように感じた。 |
2006.07.26 |