◆一章二日目(1)◆

携帯のアラームで目を覚ます。
本来の目的では使えないものの、結局手放せずにいる。
もしかしたら心のどこかで誰かと繋がっていたいと思っている所為なのかもしれない。

結局、昨夜も机で考え事をしている内に寝てしまったようだ。
立ち上がり大きく伸びをすると足元に擦り寄ってくる暖かなもの。
知らず笑みこぼれ、手のひらを差し出すと「ニー」と鳴いて飛び乗ってくる。
「おはよ!」と声をかけ、オサキ狐を撫で回す。
オサキ狐がもう嫌!とばかりに影に隠れてしまうと身支度を整え、
私は決戦の場である台所へと向かう。

「おはよう、美鶴ちゃん」努めて明るい声をだす。
「珠紀様、起きてらっしゃったんですか」

「私もなにか手伝わせて?」
「これは私の仕事ですから」
ム。やっぱり簡単にはいかないわね。

「こうみえて、私も料理が趣味なの」
「でも…もう煮上がったら終りですから」
今日はちょっと遅かったのね…
明日は理由を与えないようにもっと早く起きよう!と決意して私は台所を立ち去った。



2006.07.26