◆一章二日目(2)◆

「おはようございます」
教室の入り口で誰とはなしに挨拶をする。
教室内のざわつきがピタリと止まって、また再開する。
昨日の下校時の事を思い出して、自業自得かな…と大人しく席に着く。

「なんか好きじゃないんだよねぇ」
隣の清乃ちゃんが「おはよう」でもなく話しかけてくる。
昨日の事はあまり気にしていないようだ。
「どうしたの?」
「次の授業の先生」

「英語の先生が?どうして?」
「うーん。なんていうか完璧すぎて…見たらちょっと驚くと思うな
 …おまけにうちのクラスには珠紀ちゃんもいるしな…」
小さな声で「おまけに…」なんて付け加えられてしまって
「どういうこと?」と尋ねたが答えはもらえなかった。

ガラ。

教室の扉が開き、確かに驚いた。

金髪碧眼のグラマーな美人。
露出は少ないもののウエストの細さと胸を強調するハイウエストのスカート。
私はアンミラの制服を思い出していた。

先生はクラスを見回すと私の席で視線を止めた。
「あなたが転校生の?」
「春日珠紀です」

「俺はフィオナ先生が…」「春日さんも…」との囁きが聞こえる。
「Be quiet!
 授業をはじめます。宿題はやってきたかしら?」

最近はこんな過疎の村でも外国人教師がいるんだ…などと感心していると
「鼻の下が伸びてるよ、男子ども。あー。やだやだ。」と清乃ちゃんがうんざりした顔。

確かに。

教室を見回すと何人か視線が合う男子の他は、皆先生を見ている。

拓磨は…?と思い眺めると
拓磨も…だった。


「見てない!」

場所は変わって昼休みの屋上。
私が英語の授業の時の事を指摘すると、拓磨はキッパリと否定した。
私の方が席は後ろなんだから、事実はハッキリしているのに。

変なの。



2006.07.26