◆一章三日目(3)◆

昼御飯を食べたら、また眠くなってしまったようで…
気がつくと放課後だった。

睡眠をとり頭がすっきりしたので、早速昨夜の調査の続きがしたかった。
教室には拓磨もいないし。
昨日も途中で皆が追いついてきたこともあり、机の上にメモを残して帰ることにした。


一人で考え事をしながら歩いていると早足になっていたようで、既に林の中に入っていた。

「キッ!!」
突然オサキ狐が影から出て鋭い鳴き声をあげる。
「どうしたの?」
声をかけてもこちらを見ようともせず、前方を睨んだまま身構えている。
私は用心のためポケットの中の符を握り締める。

ゆらり。

大気の中から滲み出すように、それはゆっくりと輪郭を露にしていった。
牛の頭に人間の体?
刀を下げているということはどうやら好意的ではないようだ。

あっと言う間にそれは私との距離を詰める。
時間を稼がないと!と思った、その時。
足元から飛び出した何かがそれにぶつかった。

「オ、オサキ狐!?」
オサキ狐は一瞬にして戻り、私の足元で攻撃姿勢をとる。
それは一瞬怯んだようで足が止まった。

今だ!

符を取り出し、構える。
「天為我父 地為我母 
 在六合之中 南斗北斗 三台玉女
 左青龍 右白虎 前朱雀 後玄武
 前後扶翼 急々如律令!」

言い終わるや否や、私はオサキ狐を抱えて振り返らずに走り出す。



2006.07.27