◆二章一日目(5)◆

「今日は皆さんに紹介したい人物がいます。」
私は屋上に着くと勿体ぶった言い方をした。
皆の視線が集まったのを確認して、背後の慎司君を前面に押し出す。

「五人目の守護者の犬戒慎司君です。」

「…し、慎司?」
真弘先輩が目を丸くして尋ねる。

「おまえ、いつ!」
拓磨が驚きの声を上げる。

「…久しぶり。」
祐一先輩が目を細める。

「はい。帰ってきました。」
慎司君の答えに今度は私が目を丸くする。

「え?慎司君、皆と知り合いだったの?」

慎司君は拓磨にヘッドロックをかけられ、真弘先輩に背中をバシバシ叩かれ
「痛てて…」なんて言いながらも嬉しそうだ。

「ああ。俺達は幼馴染だ。」
祐一先輩が楽しそうにその様子を見ながら教えてくれた。

そうして一頻り旧交を暖めあった後。

「慎司君、お昼は?」
「いえ、あの、まだですけど。」
「じゃ、私のを半分どうぞ。今日はスコーンとオムレツとサラダです。」
お弁当箱を開けて取り分ける。

「ス、スコーン?なんだそりゃ??
 真弘先輩様が食べてやる!」
「いえ。真弘先輩様は食べて下さらなくて結構です。」

「うー。じゃあ!真弘先輩にも食べさせろ!」
「真弘先輩様には昨日限りと申し上げた筈です。」

どーせそんなもんは美味しくないに決まってる…と言い出した真弘先輩だが
「とても、美味しいです。」
慎司君が言うと恨めしそうな目で睨んできた。

「お口にあってよかった。今日は私が作ったの。いつもは美鶴ちゃんが作ってくれるんだけど。」
「そ、そうなんですか?とっても美味しいです。」
慌ててスコーンを頬張り、ゴクリと飲み込むと何かのついでのように尋ねる。
「あの…それで言蔵さんは…」

「あいつも元気だ。今はババ様のところにいる。」
拓磨が言い、皆頷く。
「元気にしているんなら、いいんです。」
なぜか慎司君は複雑な表情だった。 



2006.07.28