◆二章一日目(7)◆ |
神社に着くと、既に四人の守護者は到着していた。 「どうして中に入らないんですか?」 「べ…別にいいだろ。」 真弘先輩はそういうと視線を外す。 背後では慎司君が大蛇さんに帰郷の挨拶をしている。 「ただいま戻りました。」 玄関に入ると、出迎えに来た美鶴ちゃんに慎司君が声を掛ける。 「あの…言蔵さん…」 「お帰りなさいませ」 慎司君の声に美鶴ちゃんの固い声の挨拶が重なる。 美鶴ちゃんは慎司君に視線を合わせようともせず、 「では犬戒さん、ババ様のところへ。」とだけ言い、先に歩いて行ってしまう。 「私もついていってもかまわないかしら?」 美鶴ちゃんの背中に声を掛けると、驚いたように振り返り 「え、あ、あの?それはババ様に聞いてみないと…」 「当代の玉依姫は私ですよね?」 「…はい。」 「では私達は居間で待っていましょう。」大蛇さんが言うと 「なんだよ。俺らは仲間はずれか。」真弘先輩が抗議の声を上げたが 皆になだめられ、居間へと向かっていった。 私はこちらに来た当日挨拶して以来、祖母と会っていない。 用事があっても美鶴ちゃんに言付けるのみで、返事も美鶴ちゃん経由。 呪法も美鶴ちゃんに習っている。 このままでは美鶴ちゃんを越えることが出来ないのではないかと疑問に思っていた。 勿論、呪法が出来れば玉依姫になれるとは思っていないが、引き受けたからには何でも出来るようになりたい。 慎司君の挨拶にかこつけて、ついてきたのはこのためだった。 部屋に入ると美鶴ちゃんはすぐ退室してしまい三人きりになる。 祖母は私がついてきたことに多少動揺しているようだった。 慎司君が帰郷の挨拶をすると、祖母は慎司君の『力』について問いただした。 「力の発現はかないませんでした…ですが別の力であれば、多少。」 慎司君がそう言い終わると、祖母はいきなり何かを投げつけた。 「あぶないッ!」 思わず出した私の手をかすめ、物体は一直線に慎司君へ向かう。 「静止。」 慎司君が呟くと、物体は突然空中で止まった。 「落下。」 物体はそのまま落ちて行った。 「御言葉使い。 言葉に特別な意味を持たせ、それによって万象を操作する力を持つ者。」 祖母は満足そうに頷くと、続けて言った。 「よく帰ってきました、慎司。 五人目の守護の役目、引き受けていただけますね。」 「微力ながら、お役に立てるよう努力していきたいと思います」 慎司君が小さく頭を下げる。 「おばあ様、あの…」 これで話は終わったかと思い、切り出すした。 が、私が話し終わらないうちに祖母は突然苦しみだし… 「あ、い、痛いッ。み、美鶴を、美鶴を呼んで頂戴。」 …美鶴ちゃんに追い出される形で私達は居間へと移動した。 |
2006.07.30 |