◆二章一日目(8)◆

「皆さん、揃いましたので…」
居間に到着すると大蛇さんが切り出した。

「昨日、また村の封印に異常がありました。」
皆、顔を見合わせる。
数日前に三ヶ月前の異変の話を聞いたばかりで、その理由も影響もわかっていないというのに。

「前回の様に一時的に封印が消失したというわけではないのですが。
 そうですね…
 春日さんが村に着いた時に近いような封印の変化がありました。」

「それって、どういうことなんだ?」
真弘先輩の質問に一同頷く。

「わかりません。
 ですが立て続けに封印の異常が発生するということは過去に例がありません。
 皆さん十分に注意して下さい。」

「注意するって言われても…」
拓磨が呟く。
確かに。
何かに気をつけなきゃいけないけど、何に気をつけたらいいのかわからない。
皆も同じ気持ちなのか、沈鬱な空気が漂う。

そんな空気を破ったのは真弘先輩の叫び声。
「だーッ。腹減ってちゃ、なんも考えらんねぇ。
 美鶴。飯ないのか飯!」





食事は慎司君の帰郷を祝っていつも以上に更に豪華だった。
先程の話はなかったかのように
よく食べて、笑って、騒いだ。

食後もあの話はしないままで。
一度だけ大蛇さんに目で問いかけてみた。
だが、大蛇さんは静かに首を横に振り微笑むだけだった。





皆が帰り一人になって。
考える。
封印の異常の際に村に人が入ってきているのは偶然なのか?



2006.07.30