◆二章二日目(2)◆

「おー。メシ、メシ♪」

「はい、はい。美鶴ちゃん特製のお弁当ですからね。美鶴ちゃんに感謝して下さい。」
私は親鳥が雛鳥に餌を運ぶ気持ちになりながら、お弁当を手早く取り分ける。

「拓磨も、祐一先輩もどうぞ。  って、慎司君は?」
「ああ。あいつならきっと女どもに捕まってるんらろ…」
真弘先輩はもう既に口にお弁当を詰め込みながら答える。

「ああ。昨日の帰りも凄かったな。」
祐一先輩の言葉に拓磨も頷く。

なるほど。慎司君は庇護欲を刺激するっていうか、母性本能をくすぐるっていうか…
しかも本人はそういうのを拒絶できなさそうだし。
そうか…では慎司君がここに来るにはもう暫く時間がかかるのかも。
私は慎司君の分のお弁当を取り分けながら尋ねる。
「慎司君と美鶴ちゃんって何かあったんでしょうか?」

「何かあったとはなんだ?」
祐一先輩が呟く。
「美鶴ちゃんと会ったときの慎司君の様子は変でしたよ。美鶴ちゃんの方もなんか…」
私の言葉に三人は顔を見合わせた。

「色々あるんじゃないか…あいつがいなくなる前は、随分仲がよかったからな、あの二人。」
拓磨が静かに言う。
「そうそう。おままごととか、美鶴に無理やり付き合わされてたりしたてたな。」
真弘先輩が続ける。
「ついでに言うと。真弘は仲間はずれにされたと言って、よくすねていたな。」
さりげなく祐一先輩は付け加える。

「ば、馬鹿!俺は二人にちゃんと協調性ってやつをだな!」
「真弘先輩にとってみれば可愛い弟と妹が自分を仲間はずれにしているようなもんか。」
「その辺りは今もあまり変わってないな。」
「おまえら、怒るぞ!」

…何時の間にか真弘先輩いじりになっていた。



2006.07.31