◆二章二日目(3)◆

そこへ慎司君が顔を出し、周りを見回すと。
「あの。遅れてしまいました。み、皆さん何か?」

「いや、おまえと美鶴の話をしてて。」
「おまえと美鶴がいかに仲良くしていたかって話をな。」
拓磨の言葉に、真弘先輩がからかうように付け加える。

「な、なにを言ってるんですか!」
慎司君は顔を赤くして抗議する。

「思い出すなー。あの頃の美鶴は慎司にだけは強気で。
 おまえいっつも尻にしかれてたよな。」
真弘先輩が目を細めて言う。

「そ、そんなこと!」
「しょっちゅう喧嘩してて、いつもおまえが泣いていた。」
「祐一先輩!」

「慎司君、お弁当のおすそ分け。美鶴ちゃんのお手製だから!」
「珠紀先輩まで!!」

慎司君はもう何も語りません!とでも言うかのように猛然とお弁当を食べ出した。

「なぁ、どうよ。美鶴は美人になってただろ?」
真弘先輩の問いかけに気がつけば皆にやにや笑っていた。
慎司君は私達の予想通りに顔を赤くした。

「…え、いや、あの、その。そんなことはないです。」
「美鶴に言いつけるぞ。」

「え!いや、あの、そういうことじゃないんです!すごく綺麗だったけど。
 皆がからかうから、僕は…」
拓磨の呟きに対してしどろもどろになって言い訳する。

「私も協力してあげるね!」
「駄目ですよ!別にそういうんじゃないんです!
 綺麗っていうなら先輩だって綺麗じゃないですか!」

一瞬の沈黙の後。

「慎司、いいからちょっと来い!」

真弘先輩と拓磨に両脇をつかまれ引き摺られていった慎司君は
昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴っても戻ってこなかった…



2006.07.31