◆二章二日目(4)◆

放課後、校門まで急ぐ。
早めに帰宅の準備をしていたが、廊下でフィオナ先生に英語の課題作りを頼まれてしまい…
明らかに急いでいる風の、しかも転校してきたばかりの生徒に頼むなんて!
私は内心の怒りをおくびにも出さず鄭重に断った。

「ご、ごめんなさいッ。お待たせしちゃって。」
校門に着いた時には既に息があがっていた。
「ああ。そんなに急がなくても構わない。」
そう言うと祐一先輩は歩き出したので私もついていく。

「祐一先輩。」
ん?と目で先を促された。

「皆、私よりも後から学校を出ても先に神社についてますよね。
 しかも帰り道で会わないし。もしかして近道があるんじゃないですか?」
「ああ。行ってみたいのか?」

「ええ。是非。」
「道は険しいぞ。」
私はガッツポーズで答えた。

あれから10分後。

私は自分の言ったことを激しく後悔している。
険しいなんてものではなかった。
都会育ちの私には山道というだけでも厳しいのに。
道なき道…というか獣道だろ!と突っ込みたくなるような道で。
先を行く祐一先輩は涼しい顔で歩いているのに。

恨めしそうな視線を背中に投げると先輩は振り返り
「つかまれ。」
と手を差し伸べてくれた。

「だ…大丈夫です。」
全然大丈夫じゃないけど強がってしまう。

「おまえは一人で頑張りすぎる。もっと俺達を頼れ。」
そういうと優しく手をとられた。

「先輩…もう明日からは近道はしないことにします。」
「ああ。その方がいい。この状況でカミにでも出会ったら大変だ。」

「もしかして最初からこうなることがわかってました?」
…私の問に先輩は答えてくれなかった。



2006.07.31