◆二章二日目(5)◆

神社の前には近道を通った筈なのに先に皆が到着しており、
驚きの目で私達を見つめていた。

私達は手をつないだままだった。

私は慌てて手を離し言い訳を考えていた。

その時。

突然動悸が激しくなる。

一瞬にして手足が冷たくなり、目眩がする。

立っていられなくなり、その場で屈みこんでしまう。

はじめは言い訳の為の仮病かと思っていた皆も集まり、口々に声を掛けてきているが次第にそれも聞こえなくなる。

「封印が…宝具が危ない。」

意識はないのに、自分の声がそう言うのを聞き覚醒する。

「場所はわかりますか?」
大蛇さんの声に頷く。
皆はここに留まることを勧めたが、私の中の何かがそれを許さなかった。





暗い森の中をひたすら走る。
そして…自然と私の足が止まる。
どうやらここが目的地のようだ。

「そこに、誰かいるのかね?」

そこいるのは薄笑いを浮かべた奇妙な老人だった。

「ここから立ち去りなさい。そこから先は限られた者以外の立ち入りを禁じています。」
決然と言い放つ。

「結界の次は…やれやれ、せわしないことだな。」
老人は面白そうに言う。
「立ち去りなさい。」
私は一歩前に出る。
「レディを前に名乗らないのは失礼に当たるかもしれないな。
 私の名はドライ。モナドに仕える魔術師。」

守護者が私の周りを取り囲む。

ドライと名乗った老人は守護者を見回すと
「君達がこの結界のガーディアンというわけか?
 …ククク。君達は面白いな。実に面白い。」
守護者は殺気を纏っているというのに老人はさも愉快そうに笑った。

「モナドは派手な戦闘を禁止している。私はどうやら去らなければならないようだ。」
そう言い残すとその体は空間に溶けるように消えていった。



2006.07.31