◆二章三日目(3)◆

「おぉ、わりぃ。待ったか!!」
そう声が聞こえたかと思うと先輩は隣にいた。

真弘先輩は昨日のことは一切話さないことに決めているらしく
趣味のバイクの話や将来の夢、皆の子供の頃の話などを私が口を挟む間もなく
ひっきりなしにした。
私はただ隣で笑って聞いているだけだった。

「おまえ、笑ってるほうがいい。」
真弘先輩はそう言うと照れたように顔を背けた。

「あの…真弘先輩」
「んー。」

「私、真弘先輩に聞きたいことがあるんです。」
「おー!やっぱりおまえは俺に興味があったんだなー!!
 OK!OK!俺は今フリーだ!
 さぁ、この腕の中に飛び込め!!!」

ぷッ。今、先輩がちょっと格好よくみえたのに…

笑いが収まると、先輩は腕を組んですねたように立っていた。
「ご、ごめ…なさい。聞きたいのは他の事です。」
「なんだよ。」
先輩は面白くなさそうに呟いた。

「以前、先輩はウチの蔵の入り方を知っていましたよね?」
「ああ。」

「あれって以前に入ったことがあるということですよね。」
「ああ。」

「祖母…とですよね?」
「ああ。」

「何故ですか?」
「何故って…」

「祖母に何か言われてるんですか?」
「…」

「わ、…たしには言えないこと…なん、ですか…」
立ち止まり、手で顔を覆う。
「わ…わー!泣くな!泣くな!!俺が悪かった!」

「じゃ…教えてくれますか…」
「う…あ…」

「だ…め…ですか?」
涙目で見つめる。
ここは見上げたいところだが如何せん身長差が…

「わ…わかった。でも…ちょっと時間が欲し…い。」

先輩ごめん!私は心の中で先輩に手を合わせた。



2006.08.03