◆三章一日目(4)◆

私は皆に先程真弘先輩からされた話をした。

「…で、俺がキスすればいいのか?」
祐一先輩が言う。
いいのか?と言われると困るんですけど。
考えている間に祐一先輩の手が私の顎にかかり、上を向かされる。

「ちょ、ちょっ…皆、目を瞑って。」
「どれ位してればいい?」
うー。祐一先輩の声が耳元で!

「そ、そんなの…真、真弘先輩ッ!!」
「わかんねーよ、そんなん。
 なんか祐一自身が変わったとか思うまでするしかねーんじゃねぇの。」

「そんな無責任な!!」
祐一先輩の顔が近づいてくる。

何故先程は祐一先輩ならば儀礼的…とか思ったんだろう、自分が呪わしい。

「珠紀、おまえも目を瞑れ。」
言われなくても…と、ぎゅーッと目を固く瞑る。

唇に何か柔らかいものが触れた。

でもそれを意識しないように私は心の中で数を数えることに集中する。

10、
20、
30、
40、
50、数えた。

…息が苦しい。

先輩の胸を拳で叩き抗議する。

祐一先輩の唇が一瞬離れる。
私は空気を求めて、深く息を吸う。

「息を止めるな。鼻で呼吸しろ。」

そう言うと唇の端を舐められ
驚いた時には再び口付けられていた。


「全然変わらないな。」
…そんな。たっぷり5分はされてから、しれっと言われても!!


その日の夕食で私が真弘先輩に八つ当たりしたのは言うまでもない。



2006.08.03