◆三章二日目(3)◆

蔵から出て、必死で吐き気を堪える。

吐き気が治ると

今度は目眩がした。

      − 急 い で −

なんとか意識が押しやられないように抵抗する。
「わ、わかったから!急ぐから!」そう呟くと走り出す。
時刻は夕方。運が良ければ封印を見回っている守護者と会うことが出来るかもしれない。





「おい。」
商店街の外れで前方から呼び止められた。
学校の制服を着ているが、全く知らない人。

「あの…急ぎますので。」
荒い息で答え、脇をすりぬけようとすると腕をとられた。

「…おまえ宇賀谷の何だ?」
「孫ですが、なにか?」

私が答えると、その顔が近づいてきて首筋に埋められる。

「おまえ、面白い匂いがする。宇賀谷とは違う…」
彼の息が首元にかかる。

私は昨日のことを思い出し、カッとなる。
昨日は祐一先輩だったし、一応こちらからお願いするカタチだったけど!
なんで見ず知らずの男にまで!!

力を振り絞り彼から離れると、
頬にグーパンチをお見舞いする。

「このド変態!さっさと失せろ!」
そう言い残すと、走り出す。

「す…素敵だ。お、俺の名前は狗谷、遼だー!!」

振り返ると地面に倒れ頬を擦ったまま、その男は叫んでいた。



2006.08.04