◆幕間五◆

「孫…娘。宇賀谷の…孫娘。」
ブツブツ唱えながら、夕暮れの商店街を歩く。
買い物客等は「目を合わせちゃいけません!」とばかりに彼の目の届く範囲から立ち去る。

「調べごとといえば、あのおっさんか。」
ふと思いつき立ち止まると、目当ての男が正面に居た。

「やあ。狗谷君。」

挨拶は無視して切り出す。
「おっさん、宇賀谷の孫娘、知ってるか?俺と同い年位の。」

「おっさんとは失礼だな。」
無精髭の生えた顎を撫でながら苦笑する。

「答えろ。」

「それが質問をする態度かねぇ…知ってるよ。」
それっきり沈黙する。

「おい、おい。君、目から殺人光線出せるって聞いてたけど本当だねぇ。」

「芦屋。」
ただでさえ赤い瞳を血走らせて睨む。

「春日珠紀。君と同じ紅陵学院の2年生。玉依姫神社で暮らしている。
 宇賀谷のばあさんは母方の祖母に当たる。
 守護五家のメンバーのガードが固く近づける男はいない。
 どうだい、これで君の知りたい情報は得れたかい?」

「ああ。」
それだけ言い残し満足して立ち去る。

「春日、珠紀。」
小さく呟き、先程殴られた頬を擦る。

明日は久しぶりに学校に行ってみようと決めた。



2006.08.05