◆三章三日目(2)◆ |
「帰るぞ。」 授業が終わると、拓磨が目の前に立ってそう言った。 「おぉ、久しぶりに学校に来たと思ったら。そういうことになってたんデスカ?」 清乃ちゃん、それ違うから! ってクラスを見回すと万歳三唱までしてる男子がいるし… いや、皆違うから! |
「気にするな…」 「うん…」 夕暮れの道を言葉少なに歩く。 「昨日ね。美鶴ちゃんと話したの…」 「ああ。」 「慎司君ともうちょっと仲良く出来ないかなって。」 「ん…」 「でも…美鶴ちゃんのこと怒らせちゃって。 で、拓磨からなんか言ってもらえないかな。」 「なんで俺が。」 「だって美鶴ちゃん、拓磨のこと好きみたいだし。 拓磨の言うことなら素直に聞いてくれるかなって…」 「なんだよ、それ。」 暫くの沈黙の後、拓磨は話し出した。 「小さい頃。」 「美鶴は慎司にだけは強気で、慎司はよく泣かされてた。 それでも翌日にはケロッとして二人で遊んでた。」 「…慎司がいなくなってから、美鶴はすごく泣いた。」 「その頃からか…美鶴が俺に懐いてきたのは。」 「…俺は慎司の代用品だ。」 「え?」 ふと横を歩く拓磨を見ると、ただ前を見て歩いていた。 「…美鶴ちゃんは今でも慎司君のことが好きなのかな?」 「多分な。ただあまりに長く会えなかったんで それがうまく表現できないんだろ。」 「そっか…難しいね。」 またも沈黙が続く。 「だーッ!!折角二人っきりだっていうのに 何で俺は他の男の話をしなきゃならないんだ!」 拓磨の怒ったような声が聞こえたと思ったら、私は拓磨の腕の中にいた。 抗議の声をあげようとしたが 「少しだけ我慢しろ…頼む。」 拓磨のいつになく真剣な表情に何も言えなくなる。 「よし。充電完了。」 腕の中から解放された時はもう普段の拓磨だった。 |
2006.08.05 |