◆四章一日目(2)◆

風呂からあがると、既に昼過ぎになっていた。
今から学校に行っても、と蔵の探索を行う。

私は『玉依の血』に囁きかけ、調べるたいものを探してもらう。
そして私の目が合皮の表紙の薄いノートに止まる。

ページを捲り過去何度もロゴスがこの村を襲撃していることを知る。
そしてその度に玉依側はロゴスを撃退している。

「どうやって?」
過去二回の戦闘では私達とは圧倒的な力の差があった。

私はノートを読み進め、ついに目当ての文章を見つけた。
『玉依姫の覚醒により、ロゴスの人間を討ち果たす
 玉依姫の覚醒が、守護者の本来の力を引き出す』

「私の所為…か。」
努力はしている。
玉依の血が目覚めつつあることも実感している。
しかし…

時間が欲しい。
もう少し、時間を稼げれば!

私が対策を考えていると、『玉依の血』が動き出した。
「え?今度はこれを読むの?」
ノートよりは若干古そうな書籍に目が止まる。

玉依姫の正当な担い手である宇賀谷家、
言蔵家は常に本家の影となり、封印の礎の一つとなる

言蔵家には力が与えられていた
それは言霊の力【御言葉使い】としての力

玉依姫を助ける力として、それは備わった
言蔵家の女が封印の贄となる者に情けをかけたことからはじまる

贄となる者が死に際して恐怖をなくすよう
言蔵家の女は、その者に言霊の力を使う

その者は言蔵家の女に感謝して贄となった

それから言蔵家の女は代々、贄となる者から苦痛を取り除いた
しかし、それは言い換えれば、言蔵家の女は贄の儀の補助をしているに過ぎない

私はここに密かに記す

私達はただの人殺しだと


「美鶴ちゃん…」
私の呟きは蔵に吸い込まれていった。



2006.08.07