◆四章三日目(1)◆

今日(…厳密に言うと昨夜遅くだが)は記念すべき日になった。

台所大戦…停戦。

昨夜はロゴス戦で傷ついたおばあ様の看病をする為に、美鶴ちゃんは珍しく遅くまで起きていた。
私はそんな美鶴ちゃんにお夜食を作り、ついでに朝食・お弁当を…と台所に向かった。

「何をなさっているんです?」背後から声がかかる。
美鶴ちゃんは目を血走らせ、ゴゴゴゴゴ…と背後から音がしていそうだ。
「み、美鶴ちゃんこそ、こんな時間に何を?」

私と美鶴ちゃんのにらみ合いが暫く続いた。

その後、停戦協定が結ばれたのだ。
美鶴ちゃんと私による朝食・昼食を当番制。
これで長きに渡る台所大戦による寝不足は解消されそうだ。





「ねぇ…珠紀ちゃん?」
席に着くや否や清乃ちゃんが心配そうに顔を覗きこんでくる。
「どうかした?」

「この前から気になってたんだけど…」
「?」

「狗谷君と何かあった?」
「何かあったって?誰、それ?」

「隣のクラスの狗谷遼だよ?」
あの有名人知らないの?とばかりに、清乃ちゃん。
私は黙って頷く。

「昨年、突然登校拒否しだして…留年しちゃった狗谷遼を?」
よく考えてみると、清乃ちゃんと守護者の他は名前を覚えている生徒はいない…
「…やっぱり知らないけど。」

「あの目が赤くてピカーッて殺人光線が出てる狗谷遼だよ?」
「赤くて…ピカーッ?
 あ、あ、あのセクハラ男!?
 あいつがどうしたの?」

「やっぱり!?珠紀ちゃんと何かあったのね?
 突然学校に来るようになっちゃったし!
 このクラスの前をウロウロしていたり…
 昨日の帰り道、遠くから珠紀ちゃんの事と見てたよ。」

授業開始のベルが鳴り先生が入ってきたので
ホント注意してね!とだけ小さく付け加え、清乃ちゃんの話はそこで終わった。  



2006.08.09