◆四章三日目(2)◆

授業、HRも終わり。
トイレへ身だしなみに行き、教室へ戻ったつもりだった。

しかし教室には入った瞬間、その違和感に気づいた。
誰もいない。
普段ならば校庭から聞こえるはずの声や物音も一切しない。

カツリ

私はおーちゃんがすぐ飛び出せるように身構える。
「やあ、ごきげんよう。シビル。」
やはり…ドライ…

「どうだね?この空間は?ク、ク、ク。私もキツネの幻術を真似してみたんだが。
 お気に召していただけたかね?」
ドライは得意気に杖を振り回す。

「昨日は君に会えるのを楽しみにしていたのに…
 あんな婆をよこすとは。
 すっかりやる気を失くしてしまったよ。」
「婆って…あなたも十分、爺じゃないですか。」

「失敬な!私はこれでも十分若いつもりなのだが。
 まあ、いい。今日はこうして君と二人っきりだ。誰の邪魔も入らない。」
「おーちゃん、行って!」
おーちゃんが飛び出すと、私はポケットの中の符を探す。

「おやおや、久しぶりの逢瀬だというのに。
 気の強い娘は嫌いじゃないが…どれ、ちょっとお仕置きが必要だな。」
  おーちゃんを素早く呼び戻し、再度構える。
呪文を唱える間、時間を稼がなければ!

その時
教室の扉が勢い良く開いた。

「ここで何しているの、ドライ?」

「…フィオナ…先生?」
「春日さん、ここは私に任せて。」

「おまえか…何故邪魔をする?」
「あなたは昨日も命令を無視したばかりだというのに。」
先生はそう言うと私を教室の外に突き飛ばした。

「行きなさい!」
先生の声が聞こえたかと思うと扉がピシャリと閉まり、戦闘の音が聞こえてきた。



2006.08.09