◆四章三日目(3)◆

教室の扉が開かないので校門に向かい守護者を探す。
「ゆ、祐一先輩…」
先輩の手を取り、教室へと走りながらあらましを説明する。

「よし、俺が開けよう。」
先輩は私を背後に庇うように教室の扉の前に立つ。

ガラッ

拍子抜けするほど簡単に扉が開く。
そこは普段通りの教室だった。
戦闘の跡などは全くなく。

「夢?」
私は自分の机に行き、教科書等を鞄に詰めた。

「いや、夢ではないだろう。俺は一瞬おまえの気配を見失った。」
「そうなんですか?私の方からは守護者の気配はわからないのに…なんか不公平だなぁ。」

私は頬を膨らませる。
祐一先輩は私の頬を指でつつくと、微笑んで「さぁ、帰るぞ」と言った。





校門を出たところで、祐一先輩に手で口を塞がれた。

目の前をフィオナ先生が歩いているのだ。

私は頷くと、先生の後をついて歩き出した。
周囲に誰もいなくなったところで先輩はバリアを張る。
これで外界からは私達の姿も声も見えないそうだ。

先生は学校の裏手の森に入っていく。

森は夕方だというのに薄暗く、異臭が漂っている。
「大丈夫か?」先輩はそう尋ねると、私の手を力強く握る。
口を開くと吐き気が襲いそうなので黙って頷く。

10分以上歩いただろうか、ようやく森を抜ける。
空気が変わったかと思うと、そこには朽ちかけた大きな洋館があった。
先生の姿は見えなかったが恐らくその中に入ったのであろう。

「この村にこんなものが?」
「ああ、俺も知らなかった。」

私の中の【玉依の血】が騒ぎ出す。
「こ…こ、こに?宝具がある…と思います。」

「ほぅ。良くわかったな?」

「なッ!?」
先輩がバリアを張っている筈なのに!?

「その程度の術が見破れないとは…見くびってもらっちゃ困る。
 尤も。フィーアは見破れなかったようだがな。」
ククク…とドライは邪悪な笑みを見せる。

「まずいな…どうやらここは敵のアジトらしい。」
「とりあえず、撤退ですね?」
「ああ。」
先輩の返事と共に駆け出す。

「おやおや、お茶も出していないというのに。もうお帰りとは。
 少しはおもてなしといこうかね。出よ、ベルゼブブ!」



2006.08.09