◆四章三日目(4)◆

ハァハァハァ…
ドライの攻撃をかわしながら森の外を目指して走る。
しかし森の臭気が私達の足を鈍らせる。

「わッ」足が縺れて…地面が近づく。
「大丈夫か?」先輩が抱きとめてくれたので転ばずに済んだ。

「辛かったら、背中を貸すぞ。」
「お…言葉だけで…充分です。」

「じゃ、行くぞ。」
ただ、どこが出口だか全くわからないのだが…

「こっちだ。」物陰から声がする。
「おまえは…」
「セ、セクハラ野郎!?」

セクハラ野郎?祐一先輩は呟くと眉を顰める。
「先輩、今は逃げるのが先決です!」





…なんとか森とドライから逃げ切った。

だが。

「珠紀は何故こいつを知っている?」
「えーと…この前、偶然街で会いまして…」

「セクハラとはどういうことだ?」
私が言葉に詰まっていると
「そいつにマーキングしただけだ。」
セクハラ野郎はしれっと言った。

「マーキング?」
「先輩、そんな大した事ないです!ちょっと首の匂いを嗅がれただけで…」
「…良い匂いだったな。」
セクハラ野郎はうっとりと言う…

「ここか?」
いきなり祐一先輩は私の首に顔を埋め。
首筋をペロリと舐めあげた。

私は声にならない声をあげる。
「だ、大丈夫です。お風呂でちゃんとゴシゴシ洗いましたから!!」

「消毒だ。」
先輩はセクハラ野郎を見て余裕の笑みを浮かべる。

んーもーッ!!
これも全てあいつの所為だ!
私は助けてくれた恩も忘れて右フックを繰り出した。



2006.08.09