◆幕間七◆

漆黒の世界
カミには、玉依姫が悲しむ理由がわからなかった
おそらく自分は死ぬのだと、カミは悟っている
けれどカミは嬉しかった
自分は妖と呼ばれ忌み嫌われてきたから
その自分が玉依姫のために戦えることが単純に嬉しかった
側にいることを許されたことが嬉しかった
『命を賭して、おまえを守護する』
決意を含んで呟く妖に、玉依姫はただ悲しくうなずいてみせた
心優しきその妖の名は『ゲントウカ』


一転して真紅の世界
『…泣かないで』
『すまなかった  私はおまえの守護者となろう
 永劫に守り続けよう おまえも、封印も』
その顔は…


更に暗転
玉依姫は尋ねる
あなたはなぜそうまでしてくれるのかと
ヤタガラスは涙を流す
私が生き残ってしまったから
みなが命を捨てて戦っている最中に、私は命が惜しくなってしまったのだ
玉依姫は泣きむせぶヤタガラスに優しく言う
『あなたは、悪くない
 他の二つのカミはあなたを恨んでなどいない
 私がその罪を許します』



2006.08.09