◆五章一日目(2)◆

食事が終わると今度は歯磨き、トイレ、部屋割りと揉めまくり…
あまりの騒々しさに蔵へと逃げ出す。
皆もゾロゾロとついてきたが、流石に蔵の中に入ると静かになる。

そして私は『玉依の血』が読むべきものを探し出すのを待った。






かの封印の地に鬼が現れ暴れまわった
その地に住むカミ、三つのカミ、ヤタガラス『クウソノミコト』、妖狐『シトウカ』、大蛇『コドノマエ』がそれに逆らいしが鬼の力に破れる
三つのカミは当世の玉依姫にあの鬼を追い返す術を教えてくれと頼む
玉依姫は言う
助けても良いが、刀を使えばその封印は危うくなる
おまえたちは永劫に、この地で私と共に刀を守る役目を負うことになるがそれでもよいか
三つのカミたちは玉依姫と契りを交わし、封印によって守られし神の力を与えられた
七日七晩戦い妖狐と大蛇が命を落とし、そして鬼は滅した
玉依姫は鬼の復活を妨げるため封印された力を解放し、鬼の首をはねた
こうして神の力に鬼斬丸の名がついた
良きものによって解放された刀は再度封印がなされた
しかしその封印は甚だ弱いもので、いずれその効力を失うことは目に見えていた
一人残ったヤタガラスは





パズルのピースがカチリとはまった。

「そうだったのか…」
私が言おうと思った台詞が蔵の中から聞こえてきた。
「…拓磨…」

「俺が、皆を…封印に縛り付けた元凶…か。」
「ど、どうしたの?」
「おまえが今、そう話していただろ!」

そう叫ぶと蔵を飛び出した。

「拓磨…違うの。」
境内で拓磨に追いついた。
でも、どうやって伝えたら…

『任せて』
私の中の【玉依の血】が優しく囁く。



2006.08.10