◆五章一日目(3)◆

「拓磨、ここに座って。」
拓磨は抵抗する気力もないようで素直に石段に腰掛ける。

「目、瞑って。」
拓磨は黙って目を伏せる。

私は拓磨の前髪を掻きあげ額をあわせる。

一瞬。
拓磨の体がピクリと反応したが、そのままそっと抱きしめる。

「…おい…」
「黙って。」
お互いの息が顔に掛かる。

どうか伝えてあげて。
拓磨に真実を。

触れた額から【玉依の血】が見せるイメージが流れ出でる。





【玉依の血】からのイメージを伝え終わると。
拓磨は搾り出すように声を出す。
「俺が…鬼崎が守護者になったのは…」
「そう。もっと早かったの。あのオニとは関係ないの。」

「俺は…もっと前の玉依姫と…」
「常世神と呼ばれたカミとの間に生まれた子供の血に繋がる者。
 拓磨は常世神に似てるんだって。」

「そうか。」
拓磨は照れたように微笑む。
拓磨って意外と笑顔が子供っぽい。
私も一仕事果たして安心して微笑む。

私は拓磨を抱きしめたままだということに気付き、慌てて離れようとすると
今度は拓磨に抱きしめられていた。

「あの…」
拓磨の顔が近づいてくる。
「えーと…」
元々密着していたので逃げ出す隙間もない。

「…若いねえ。」
その時、石段を上ってきた声によって拓磨は私を解放してくれた。



2006.08.10