◆五章一日目(4)◆

「芦屋さん…」
「やあ。お邪魔しちゃったかな?」
のんびりと石段を上がってくるが、一体何時からそこにいたのかは不明だ。

「何か情報が?」私は表情を固くして答える。
「ああ。」芦屋さんはいつものニヤニヤとした笑みを浮かべている。

「わかりました。
 拓磨、皆を居間に来るように行ってくれる?」





居間に皆が集まる。
大蛇さんに典薬寮について簡単に説明をしてもらう。
皆は口を挟まず、大蛇さんと芦屋さんを交互に眺めている。
芦屋さんは…といえば視線に照れる風でもなく、ポリポリと頭をかく。

「では、芦屋さん。お願いします。」
私の声に頷くと、芦屋さんは口を開く。

「まず一つ。ロゴスのアジトがわかった。」
「それはこちらでも掴んでおります。」
「ほぅ。」芦屋さんは細い目を更に細める。

「ではもう一つ。ロゴスの分裂が確定的になった。」
沈黙の後。芦屋さんが続ける。

「この前の封印の襲撃はどうやらドライの独断らしい。」
「でも…」
「ああ、そうだ。アイン、ツヴァイも襲撃に加わっていた。
 だが二人はドライに操られているらしい。」

「アリアは?」
「まだわからないが…主力はドライ派だからねえ。
 流石に殺しはしないだろうが。」

「僕からの報告は以上だ。」芦屋さんはそう結んだ。

私は周囲を見回す。
一様に驚いている中で、慎司君の顔色の悪さが気になった。

「大丈夫?」声を掛けると
「え…ええ。」慎司君は真っ青な顔をして頷いた。

「ああ、そういえば。
 神社の石段の下にいた制服の彼は君達の新たなお仲間かい?」

芦屋さんはククク…と笑いながら去っていった。



2006.08.11