◆五章一日目(5)◆

「で。何してるの、そこで?」石段の上から見下ろして言う。
「おまえが学校に来ていないから…」石段の下から声が返る。

「彼は?」一人学生でない大蛇さんが尋ねる。
「最近、珠紀に付きまとってるセクハラ野郎です。」…祐一先輩。
「珠紀。俺達、最近運動不足なんだけど?」真弘先輩がシャドウボクシングをしながら叫ぶ。

「真弘先輩。私に少し話させてください。」先輩を振り返り制してから、前を見据える。

「だからって家まで来るなんて。ストーカー?」
「おまえのことを一目見たくて。」モジモジしながら答える。

「ああそう。私忙しいから暫く学校には行かないから。」
「そいつらは?」私の背後に居る守護者を見て尋ねる。

「俺達はこいつと一つ屋根の下で暮らすんだ。」
「羨ましいか?羨ましいだろ!?」
「真弘先輩、大人気ないですよ…」
「慎司!おまえ一人、良い子ぶるなよ!」
…外野に付き合ってると長くなりそうなので無視することにする。

「俺も…ここに居る。」
「は?」

「家に入れてくれとは言わない。おまえの近くでおまえのことを見つめていたい。」
「はぁ?」

「おまえが学校に行くまで。そいつらがおまえの近くに居る間。俺もここに居る。」言い切っちゃってるんですけど。
「…警察呼びますよ。この変態。」

鼻血を流して恍惚の表情を浮かべている。

「…キモイ。」
「もっと言ってくれ…」

涙まで流しはじめる。

私は大きく溜息をつくと。
「とりあえず、夜は帰って。日中は来てもいいから。」



2006.08.11