◆五章二日目(2)◆

朝食の後片付けも済み、調べ物の嫌いな拓磨と真弘先輩は封印域の見回りへと
それ以外の面々は蔵へと向かう。

途中、もう一人ピックアップして。
部外者を蔵に入れるのはどうかとも思ったが、昨夜のように石段の下にジッとされていたのでは
通りすがりの人に通報されるかもしれない…
私は一人ではないし、自分達の目の届く範囲においておく方が安全だという訳だ。

私は『玉依の血』が読むべきものを探し出すのを待つ。
そして手に取った物は…【言蔵家の家系図】?

【家系図】を紐解く、と。
「!?」
「どうかしたんですか?」
声を出さないように注意したつもりだったが、背後にいた慎司君に気付かれてしまった。

「な、なんでもない。」
慌てて【家系図】を隠そうとするがそれを怪しんだ慎司君の方が先に反応した。

『静止』

【家系図】は取り上げられ、そして開かれる。
慎司君は驚きで目を見開く。
「僕と美鶴ちゃんが!?」

私は何も答えられず、目を伏せる。

「そ、そんな…」
ふらふらと慎司君は蔵から出て行く。

「慎司君、待って!」
慎司君に追いついたものの掛ける言葉が見つからず、ただ黙ってついて歩く。

「僕は言蔵家から捨てられたんですね。」
寂しそうに呟く。

「僕は守護者としての能力がなくて…
 犬戒家から捨てられるように修行に出されたのに。」
「慎司君…」

「僕はいらない子供だったんだ。」
「そんなことない!!少なくとも私には慎司君が必要だよ!」

「…先輩、ありがとう…
 先輩ともっと早く会いたかった…」
寂しそうだけど、微笑んでくれた。

「少し一人にさせてください。」
そう言う慎司君に私は頷くしかなかった。


…それきり慎司君は帰ってこなかった。



2006.08.11