◆五章三日目(2)◆

「あー。ハラヘッタ。」
「真弘先輩、これから襲撃っていうのに…もっと緊張感持ってくださいよ。」
既に洋館の前。
いつでも敵が襲ってきてもおかしくない状況なのに。

「だってよぅ…」
「珠紀、本当に幻術を使わなくて平気か?」
「前回ドライには通用しないことがわかりましたから。
 今回は正面玄関から正々堂々お邪魔しましょう。」
「もしも敵がいた場合は私達が時間を稼ぎます。
 その間に珠紀さんと狐邑君で宝具を奪う…そういうことで良いですね。」
「はい。」





「嘘…」
「誰もいませんね。」
扉を開けるとそこはガランとしたホール。

「さては俺様達に恐れをなして逃げ出したか?」
真弘先輩は口ではそう言いながらも全身から緊張感を漂わせている。

「では宝具をさがしましょうか。」
「珠紀、宝具の在処はわかるのか?」
「はい。」
「じゃ、とりあえず皆でお宝捜索といきますか。」

「…でもこれ罠じゃないのか?」
「それも考えられるでしょう。
 だからと言ってこのままここにいても仕方ありません。」
「進むしかないか…」
「ええ、行きましょう。鬼崎君。」

宝具を探してホールから階段をあがり、二階の端の部屋を目指して歩く。

「そういえば、狗谷って異常な嗅覚なんだよね?」
「ああ。」
「それって敵を見つけるのに役に立たないかな。」
「どういうことだ。」
「ここに誰がいるか、とか?」
「俺達の他にか?」
「勿論。」
「女二人。男一人。」
「年齢なんかもわかる?」
「三人とも若い。」
「女性二人はアリアとフィーアですね…男性はアインかツヴァイですか。」
「それは何処に?」
「どうやら今向かっている部屋だ。」



2006.08.14