◆五章三日目(3)◆

…トントン…

「おい、敵のアジトでノックなんかする奴がいるか…」
「…つい癖で…」
ったく…と言いながら、真弘先輩が扉を開ける。

「珠紀先輩…」
「し、慎司君?」
男性一人って慎司君の事だったの?

「おい、慎司!なんだよ、一人で功を立てようとしたのか?」
「慎司…おまえ…」
「慎司、探したぞ。」
「犬戒君。どうしてここに?」
皆、口々に慎司君に声を掛ける。

すると慎司君が答える前に、部屋の奥から少女の声が聞こえた。

「フェンフ。おまえは帰れ。」
「…アリア…」
「シビルか。」
「宝具なら持って行け。ドライに持っていられるよりはマシだろう。」

「ドライはどうしたの?」
アリアはフッと自嘲的な笑いを漏らす。
「ドライはここにはいない。アインもツヴァイも私の元を離れた。」

「それで!僕はアリア様が先輩のところに来るようにって!」
「…うるさい、フェンフ。私はこのままでよいのだ。」
「だって!アリア様!!
 このままではアリア様はドライさんに殺されてしまいます!」
「それも仕方あるまい。手下に裏切られるような頭では…な。」

   パチン

乾いた音が室内に響く。

「何言ってんの!
 裏切られたからって…大人しく殺されてやることなんてないじゃない!
 諦めるなんてまだ早い、あなたにはまだあなたを信じてくれる人がいるでしょ!」
「おまえ…今まで敵だった私に情けをかけると言うのか?」
アリアは頬を擦りながら呟く。

「全く!小さい子はそんなこと気にしないの!」
私は強引にアリアの小さな手を取る。

「ぶって、ゴメン。」
もう一方の手で少し赤くなったアリアの頬を撫でる。

「よい。私も目が醒めた。
 おまえ達と馴れ合うつもりはない。ドライを倒すまでの一時的な共闘だ。」

「それでもいいよ。」



2006.08.14