◆六章一日目(4)◆

「んーでも、当面の敵はドライよね。」

宝具も取り返したし、封印をしようとすればドライが邪魔しに来るだろうし。
邪魔をさせない為にはドライをなんとかしなければいけないし。
そもそも今封印しようとするにはアリアを説得しなきゃいけないし。
それ以前に私、覚醒してないんで封印出来ないんだった…

「はぁ…とりあえず蔵に行ってみますか…」





蔵の中で【玉依の血】に問うてみても、何の返答もない。
「ちょっと!どういうこと!!」

手当たり次第に書を取ってみるも、何の反応もない。
「もう…どうしろって言うのよ…」
床に散らばった書に埋もれるように寝転がる。

「…何やってんだ、おまえ。」
「真弘先輩…」

「あーあ。こんなに散かして…片付けるの大変だぞ。」
先輩は散らばった書を拾い集める。

「先輩。私が覚醒する方法、知りませんか?」
ガバッと上半身だけ起き上がり尋ねる。

「あー。なんだ、おまえそんなことで悩んでたのか?」
「そんなことって…」

「大丈夫、大丈夫。いざとなれば真弘先輩がなんとかするから。」
先輩は手に取った書でポンと私の頭を叩く。

「なんとかするって…【クウソノミコト】の約束のこと?」
「おまえ…知っていたのか…」

「真弘先輩、死ぬなんて簡単に思っちゃ駄目だよ。」
「俺だって簡単に思っちゃいねぇよ。」
いつもの真弘先輩の軽口ではなく、ぶっきらぼうに呟く。

「私は出来るだけ犠牲が出ない方法を探したい。」
方法なんて全然わからないけれど、ギリギリまで粘ってみたい。

「それはもう本当にどうしようもなくなったら、真弘先輩に頼るかもしれないけど。
 でも、その時は真弘先輩一人で逝かせはしない。」
「お、まえ…」

真弘先輩の瞳が潤む。
泣き顔を見られまいとするかのように私に背を向けようとする先輩の手を掴むと、バランスを崩し私の胸の中に落ちてくる。
私は声を堪えている先輩の頭を撫でる。

どれ位、そうしていただろうか…

真弘先輩のはゆっくり私から離れると
「珠紀、おまえ胸大きいな。」



2006.08.16