◆六章二日目(1)◆

「…おはようございます…」
「どうしたの、慎司君?」
台所に遅れて入ってきた慎司君は瞼が腫れて目は充血しており、酷い顔色だ。

「えぇ…ちょっと…」慎司君は口籠る。
「犬戒君、あなた…」
フィーアは何か気付いたようだが、口を噤むと慎司君に持っていたボールを押し付ける。

「どうしたの?フィー…じゃなかったフィオナ先生。」私は隣にいた美鶴ちゃんに囁く。
「さあ?」美鶴ちゃんは首を傾げる。
「なんかさー。綺麗な人は怒っても綺麗よね。」清乃ちゃんはホゥッと溜息をつく。
私達はフィーア・慎司君を見比べ、コソコソと噂をしながらも朝食の準備を進める。





「ちょっと、皆どうしたの?」
「…先程からこれだ…」アリアが呆れたように言う。

朝食を居間に運ぶと、そこに生きているのはアリアの他は祐一先輩と大蛇さんのみ。
狗谷はいつもの殺人光線は出ておらず、生気もない。
拓磨は目が虚ろで、ブツブツ独り言を呟いている。
真弘先輩に至っては…

…合宿始まって以来の静かな朝食となった。





私達学生と違い、フィーアは長く休めない為学校へ。
その間のアリアの護衛は慎司君が担当。
…今日の慎司君は半壊しているのでサポートに美鶴ちゃんがつく。

清乃ちゃんの監視は、清乃ちゃんの強い希望で大蛇さんにお願いした。
「なんなら同じ部屋で寝泊りしてもいいのよ。」なんて清乃ちゃんはウィンクしてるし。

うーん。そうしてもらいたいかも…
昨夜は風呂場でのぼせてしまった清乃ちゃんを部屋に連れて帰って尋問したのだけれど…
…その後が酷かった。寝言、歯軋り、イビキ…

朝食の後片付けを終えると、死臭がしている三人を居間で寝かしつけと
自室に一度戻り、何通かメールを送る。
そして蔵へと向かった。



2006.08.17