◆六章二日目(2)◆

蔵について、【玉依の血】に問いかけても昨日と同じで反応はない。
取りあえず昨日散かしてしまった書を片付ける。

それにしても。
あれ以来ドライが襲ってこない。
ドライが鬼斬丸を諦めたとは思えないし…

おばあ様にしたって。
宝具は全部取り返したのに、封印について何も言ってこないし。
私が覚醒するのを待っているのだろうか?
もし覚醒したら本当に私に鬼斬丸を封印させるつもりなのだろうか。
私が封印の為に殺されるってことはないのか?
私よりも真弘先輩の方が封印の効果が高いとしたら、先輩に犠牲を強いることはないのか?

ったく…
年寄りの考えることはわかりません!!

「もぅ…玉依姫ったらどこか行っちゃったのかな?」
…文句を言ってみても何の反応もない。

私が玉依姫になるには何が足りないのだろう?
玉依姫としての覚悟はある…つもりだ。
才能だって…自分でも自身があった。
途中までは。
これはダイエットでいうところの停滞期なのか。
この時期を乗り切ればグーンッと玉依姫に近づくのだろうか。

「…はぁ。」
書が片付け終り、綺麗になった床にペタリと座り込む。





「珠紀。」
「先輩…」
振り返ると蔵の入り口には祐一先輩。

「…どうした?」
「えーと。あの…ダイエットの停滞期について考えてました。」
「ダイエット?おまえもっと太ったほうが良いくらいなのに?」
先輩は隣に並んで座る。

「…先輩は何故、お風呂を覗かなかったんですか?」
一昨日から思っていた。
大蛇さんは大人だし、別室だったけれど、同室の祐一先輩は何故って?
先輩からは返事はなく、ただ驚いた顔でこちらを見ている。

「あ、いえ。別に覗かないのが悪いとかじゃなくて。
 まぁ…高校生位なら興味があっても仕方ないんじゃないかなって。」
自分で言っていて『これじゃ私の裸が見たくないの?』って聞いているみたいで変だなぁと思いながら。
「興味がないわけじゃない。」

「え?」
先輩は私から視線を外すと
「…ばれたらおまえに嫌われると思って…」

「き、嫌いになんかなりませんよ。真弘先輩達のことだって嫌いになんかなってないですよ?」
ちょっと呆れてますけどね、と付け加え笑う。
「そうか…真弘が羨ましいな。」
先輩は照れたように微笑んだ。

祐一先輩は人と関わるのが苦手…というか怖いのかな?
それって、もしかして…?



2006.08.17