◆六章二日目(3)◆

暫しの沈黙の後、先輩はポケットから小さな箱を取り出した。

「ダイエットの敵。」

箱を開くと個別包装のチョコレート。
先輩の細い指がくるくると個別包装を解いていき
そして私の口元に…

「あ…の…じ、ぶ…」
全部言い終わる前に先輩の指が口の中に侵入してきた。

先輩の指を食べているみたい…

これってかなりエッチ。

頬に熱が集まっていき、

目に涙も溜まっていく。

先輩に指を抜いて貰おうと目で訴えると…

玉依姫だったのか、珠紀だったのか定かではないが、先輩が私のことを呼んだ。

先輩の影が私の上に落ちてきて、目を瞑ると溜まった涙が零れ落ちる。





先輩…伝わっていますか?
玉依姫はゲントウカのことを愛していたんですよ。
ゲントウカは自分がケモノだからと玉依姫と距離を取ろうとしていた…それが悲しかったって。
鬼斬丸の力を解放すればゲントウカが無事ではいられないって解っていて…それが辛かったって。





チョコレートの味が口いっぱいに広がる。
私がキスをしているのか玉依姫がしているのか、よくわからない。
祐一先輩にしているのかゲントウカにしているのかも。
多分、両方なのだろう。
玉依姫の意識と私の意識が交じり合っている感じ。

腕を先輩の首に回す。
ふと指に触れた柔らかい髪が気持ちよく、もっと触れたくなる。

 サラサラ…
   サラサラ…
      フカッ

ん?『フカッ』?
パチリと目を開けると先輩の耳が!?
慌てて先輩から離れる。

「せ、先輩、耳が生えて…」
再び唇を塞ごうとする先輩の手を取り、新たに出現した耳に触れさせる。



2006.08.18