◆七章一日目(2)◆

「…どうなってるの?」
洋館のホールにはドライではなく、死んだはずのアインとツヴァイがいた。

「アリア?」背に庇ったアリアに尋ねる。
「あいつらからは生気が感じられない。」
「ってことは死んでるってこと?」
「ああ…多分ドライの反魂術で動かされているのだろう。
 アーティファクトがなければ出来ない呪法だと聞いていたのだが…」

よくわからなかったが、ドライには死者をも動かす力があるということだろう。

「どっちにしろ、やるしかないんだろ!」
「そうッスね。」
拓磨と真弘先輩が前に出て身構える。

「待て。私に話をさせて欲しい。」すい、とアリアが前に出る。
「アリア?」
「私のしもべだ。私に説得出来なければ、その時は頼む。」
「…わかった。」





アリアは静かにアインとツヴァイの前に立つ。
「私はおまえ達の良き主ではなかったかもしれない。」
アリアは恐れる風もなく、アイン・ツヴァイとの距離を縮めていく。

「もし、おまえ達の望みが私の命ならば…構わない。」
「アリア!」私は堪らず叫ぶ。
「珠紀さん、ここはアリアに任せましょう。」大蛇さんに囁かれる。

「コ、ロセ…」ツヴァイは鎌を引き摺り、アリアへと近づく。
「おまえ達が蘇ったのは私の所為か。
 死して尚、私を案じて…その気持ちをドライに利用されたのだな。」

「コロ、シテクレ…」アインもゆっくりとアリアへと近づく。
「死者の望みは蘇ることではないのだな…」アリアは俯き、そして寂しそうに呟く。

「おまえ達の望みを聞き届けよう。」
アリアは顔をあげると言い放つ。

「安らかに眠れ。」
アリアの体を白い光が包む。
光は拡大していき、アイン・ツヴァイをも飲み込む。

やがて光が消えた時、そこに立っていたのはアリアだけだった。



2006.08.22