◆七章一日目(4)◆

パチパチパチ…
拍手が芦屋さんを取り囲む。

「どういうことかな?」芦屋さんは訝しげな眼差しをこちらに向ける。
「お役目ご苦労様でした、芦屋さん。」

「清乃…おまえ…」
「えー。只今を持ちまして芦屋さんはこの地区の担当から外されました。」清乃ちゃんがニッコリ微笑む。

「私、考えたんです。
 私の母が玉依姫という役目を放棄して何故この村を逃げられたのか。」
芦屋さんを目の端に捕らえて言う。

「それで思ったんです。
 母はすっごい偶然で逃げられたんじゃないかって。」
盗聴の可能性があるので電話は使えなかった。

「春日の祖父って政府の上層部にも口が利くんですね。
 典薬寮の人事にも介入してもらっちゃいました。」
まさか祖父とギャル文字でメールの遣り取りをしてるとは思わなかったのだろう。

「フ…もし俺がドライを退却させなかったら?」

「自力でドライを倒すつもりでした。
 でも清乃ちゃんから芦屋さんがドライを無力化する方法を見つけたと聞いていたし、
 私を増長させない為にも、あなたが来るのではないかと思っていました。」

「ククク…。君には負けたよ。
 是非大学を卒業したら典薬寮に来て欲しい人材だよ。」





「アリア…」
「ああ。ドライがいなくなったな。」
アリアは誰もいなくなったホールをぼんやり見つめ呟く。

「元々ドライを倒すまでの共闘っていうことだったけど…でもアリアとは戦いたくない。」
「私もおまえとは戦いたくない。
 それに…死者が復活を望まないのならば、私がしようとしていたことは、お母様を悲しませるだけだ。」
こちらを見ようとはせずにアリアは静かに続ける。

「じゃあ、一緒に神社に帰ろう?」
「フン。おまえがどうしてもと言うのならば行ってやる。」
「どうしても!」

そう言うとアリアと美鶴ちゃんの手をとり、走り出した。



2006.08.23