◆七章二日目(1)◆

「で?珠紀ちゃんの本命は誰?」

朝の台所。
いつものように皆で朝食の準備をしていると、唐突に清乃ちゃんが言った。
清乃ちゃんは典薬寮の季封村責任者になったが、まだこの家に残っている。

「私もそれは気になります。鬼崎さんじゃないですよね?」
…とは美鶴ちゃん。

「えーッ!?卓さんでもないよね?」
「…清乃ちゃん、芦屋さん狙いじゃなかったの…」

「え?バレバレ?でもさーッ、卓さんとはここに来てから一緒にいるでしょ…だから…ねッ!?」
「『ねッ!?』って言われても!」

「そうですよ、多家良さん。大蛇さんにはフィオナ先生の方がお似合いだと思います。」
「なッ!美鶴ちゃん、この裏切り者!!」

「それにアリアにも父親が必要だと思います。」
「私にだって彼氏が必要だよ〜。だって私よりも年上って大蛇さんしかいないじゃない…」
えーと。清乃ちゃん、この家で彼氏を作らなくても…

「多家良さんッ、時代は年下ですよ!でも鬼崎さんは譲れません!」
「じゃあ、フィオナ先生が年下の彼氏じゃ駄目?」

「フィオナ先生だと生徒に手を出した…って犯罪になってしまうじゃないですか!」





「…すっかり私は蚊帳の外ね…」
「本当はどうなんですか?大蛇さんのことは?」

「…まぁ、フェンフまで。」
フィオナ先生は微笑む。

「確かにアリア様に父親役を…というのは悪くないわね。」
「では僕はアリア様の兄役を。そして姉役には…」

「春日さん…ね?」
「それも良いですね!お兄さん!」

「み、美鶴ちゃん!?」
「珠紀様!慎司君…いえ、お兄さんならお奨めですわ!」
美鶴ちゃんも慎司君もすっかり明るくなったなぁ…それは良いことなのだけど。

「ちょ、ちょっと待ってよ!それじゃあ卓さんはフィオナ先生に取られちゃうじゃないの〜!!」



2006.08.24