◆七章二日目(3)◆

そんな私の窮地を救ったのは突然開いた襖だった。

「珠紀、いえ当代の玉依姫。
 封印の儀式は今夜執り行うことで良いでしょうか?」

「おばあ様…」
今までの困ったながらも楽しい雰囲気は一瞬にして消えてなくなった。

「それについては私に考えがあります。」
「な、なんです?」

私は静かに切り出す。
「鬼斬丸の封印のシステムが千年以上も続いていることは知っています。
 でも…誰かの犠牲の上に成り立つこんなシステムはおかしいと思います。」

「それは仕方のないことなの。わかって、珠紀?」

「仕方ないこと…なんて納得出来ません。
 もし私が封印の贄になるとしたら? 私の大切な人が封印の贄になるとしたら?
 納得できる筈がありません。」

おばあ様は何か言いたげだが、唇を噛み締めている。

「この千年がそうでした。
 私が今回完璧な封印を行ったとしても、いずれまた封印が弱まることがあるでしょう。」

「珠紀…あなた…何を…」

「私は鬼斬丸を壊す。」

「駄目!そんなことは!私は認めないわ!」

「認めてもらおうとは思っていません。」

「そ…そんなこと!私は反対です!」
おばあ様は走り去っていった。





「…本気か?」真弘先輩はいつになく真面目な顔をして尋ねる。
「ええ。」
「だが…悪くない。」狗谷が小さく笑う。
「そうですね。悪くない。」大蛇さんもニヤリと笑う。
「これで…僕達は守護五家は…封印から解放されるんですね。」慎司君が涙ぐむ。
「そうだな、慎司。」その肩を優しく叩く、拓磨。
ポンポン…私は祐一先輩に優しく頭を叩かれた。



2006.08.24