◆八章一日目(1)◆

「ったく!ババ様は何考えてるんだ!!」真弘先輩が怒鳴る。
「鬼斬丸を封印したいのでしょう。」大蛇さんが答える。

「でも…私はここにいるのに?」
「み…美鶴ちゃんは?」慎司君が不安そうに尋ねる。

「うん。どうして美鶴ちゃんまで?」
「鬼斬丸の封印には色々方法があるんだよ。」

真弘先輩の言葉を皆で待つ。

「まずは玉依姫による封印な。
 それから玉依姫の封印の予備の…鴉取の…ヤタガラスの末裔による封印。
 美鶴を連れて行ったってことは…」

…ゴクリ…

「玉依の血でのみ鬼斬丸は封印できる。
 美鶴だって遠縁とはいえ玉依の血に繋がるもの。
 玉依姫の代わりに封印出来ないことはない…ただ美鶴が無事で、とはいかないだろうな。」

「そんな!」慎司君の顔面が蒼白になる。
「美鶴ちゃんを見付けないと!」

「もしかしたら美鶴はそれがわかっていてババ様についていったのかもしれないな…」
「なんで!?拓磨?」

「自分の命だけで他に犠牲を強いなくて済むとしたら、おまえだってついていかないか?」
「そうですね。元々言蔵さんはババ様に従うように躾けられていましたし。」

「そんなの嫌だよ…もう誰にも犠牲になって欲しくないのに。」

昨日まで誰が好き?とかそう言う話で盛り上がってたのに。
美鶴ちゃんは拓磨が好きだった筈でしょ?
諦めちゃうの?

「絶対嫌!美鶴ちゃんを助ける!そんでもって鬼斬丸は壊す!!」
私は絶対諦めないんだから!

「仕方ねーな!」
「あぁ、俺達の玉依姫が言ってるんだからな。」
「協力するしかねぇな。」
「フンッ。」
「皆さん、お願いします。」
「ババ様が儀式を行うとしたら夜ですから、それまでに対策を練りましょう。」



2006.08.24