◆八章一日目(3)◆

こっそり夕食の準備をしていると背後から声を掛けられた。

「私も共に行こう。」
「アリア…」

「気持ちだけ有難く受け取っておくよ。」
「いや、私も行く。ミツルには世話になった。」

「そうよ!私だって!」
「清乃ちゃん…」

「駄目って言ったって、私は典薬寮季封村責任者なんですからね!」
「ありがとう、二人とも…」

「その内フィーアも到着するだろう。皆でミツルを取り戻しに行こう。」
「そうだよ〜。夕食はこれだけじゃ足りないでしょ?
 美鶴ちゃんが帰ってきてから皆で作ろう?」

…私は頷くのが精一杯だった。





おばあ様は封印の地である沼のほとりに結界を張り、祭壇を作っていく。
私達が来ていることも当然気付いているだろう。

「大蛇さん、あの結界って私にも破れます?」
「ええ。今のあなたなら。」大蛇さんが力強く頷く。

行動を起こすのは鬼斬丸が現れた時。
それまでは大人しく見守っている。

美鶴ちゃんはまだ来ていない。
…ということは儀式まではまだ時間が掛かるのだろう。

「なぁ…まだ時間掛かるんじゃね?」
「えぇ。そうかもしれませんね。」

「じゃ、メシ食ってこよーぜ。」
「…真弘先輩…」
「プッ…まぁ、これ位肩の力が抜けていた方が良いですね。」

「シッ!動きがあるようだぜ。」
「えッ、あッ?狗谷レーダー?」
「ああ。どうやら始まるらしい。もう一人女の匂いが近づいてくる。」



2006.08.25