◆八章一日目(5)◆

「おばあ様!!」
アリアとフィーアから逃れた、おばあ様が祭壇の上によじ登る。
私はおばあ様を引き摺り下ろそうとするが、この小さな老女のどこにこんな力が?というような力で抵抗にあう。

「珠紀、これしか方法がないの…」
そう言い残し、おばあ様は鬼斬丸に貫かれていった。

ドクリ。

私の中の【玉依の血】が動き出す。
おばあ様は自分の身を捧げて、私に封印をさせるつもりなのだ。
「そんなことさせない!」

柄に手を掛け叫ぶ。「皆、力を貸して!」

返答はないけれど。
拓磨の、真弘先輩の、祐一先輩の、慎司君の、大蛇さんの、狗谷の力を感じる。
アリアの、フィーアの、清乃ちゃんの力も。

ふわり。
私の体を暖かいものが包む。
「おーちゃん?」
おーちゃんは千早となり、宝具もいつの間にか装着されている。

「滅せよ!」
【玉依の血】が激しく動き出し、柄から鬼斬丸に伝わって行き。

おばあ様を貫いていた鬼斬丸が光の粒のように拡散して消えた。

「…珠紀、あなたっていう娘は…」
「おばあ様…」
おばあ様を祭壇から下ろし、抱きしめる。

「私には鬼斬丸を封印することが全てだったの。許して欲しいとは思わないわ。
 美鶴を殺して私も死ぬつもりだった。ふふふ…でもこれも悪くないわね…」

「おばあ様、もう話さないで。」
血が止まらない。私の千早は朱に染まっていく。

「美鶴には何の罪もないの。全ては私の所為…あの娘を責めないで」

私が頷くと、おばあ様はニッコリ微笑み…そして。

逝ってしまった。

「誰も犠牲を出さないって言ったのに…」

ポンポン…多分、祐一先輩だろう。
私は何度も頷きながら、涙が止まる迄おばあ様を抱きしめていた。



2006.08.25