◆終章(1)◆

「本当に帰ってしまうんですか?」
慎司君が玉子を割りながら寂し気に呟く。

「うん。」
私は小麦粉をふるいながら頷く。





おばあ様が亡くなり、両親が緊急帰国したのは
丁度冬休みに入り
清乃ちゃんは典薬寮に、アリアとフィーアはロゴスに事の顛末を報告に行ってしまった後で。
神社には美鶴ちゃんの他には、ずるずると合宿を続けていた若い男ばかり6人…

しかも手渡されたばかりの通知表には。
成績の降下は然程ではなかったとは言え、出席率の悪さは誤魔化しようがなく。

三学期からは東京に戻され、春日の祖父の元から学校に通うことになってしまった。
その準備があり両親は帰京してしまい、準備が済み次第、海外に戻ることになっている。





「寂しくなります…」
最近やっと元気を取り戻した美鶴ちゃんは年明けから紅陵学院に通うことになっている。
私がいなくなると慎司君と二人で神社に住むことになるが…

フィーアはすっかり学校の先生でいることが気に入ってしまったようで
ロゴスから帰国した後は、ここから学校に通うことになるようだ。

勿論、アリアも一緒。
【聖女】であるアリアがそんなに簡単にロゴスを抜けられるのかは解らないけれど
きっと二人ともここに戻ってくる。

清乃ちゃんも典薬寮の責任者として、ここに住み続けるつもりらしい。
…とは言っても。もう守るべきものはないのだけれど。
村の封印も今では鬼斬丸の影響で騒ぎだしたカミを封じる程度の規模に縮小された。

そうそう。清乃ちゃんは「携帯が使えるように掛け合う!」って意気込んでたっけ。

フィーアもこの村に残ると決めてから大蛇さんがアリアの父親役として適任じゃないかと思い出したようで
大蛇さんを巡る戦いはこれから美鶴ちゃんに携帯で教えてもらえるかもしれない。

「アリアもフィオナ先生も。多家良さんも帰ってこないうちに珠紀様がいなくなってしまうなんて…」
んー…確かに。
後から三人には怒られるだろう。

でも、とりあえずは…
「美鶴ちゃん!『珠紀様』じゃないでしょ?」
「あ…すみません!『珠紀さん』。」



2006.08.26