◆終章(2)◆

「でも…よかった。美鶴ちゃん明るくなって。」
「そうですか?」
美鶴ちゃんはにっこりと微笑み、首を傾げる。

「でも珠紀さん、あなたも変わられましたわ。」
「えー?そう?」
自分では気付かなかったけれど…

「そうです。こちらにいらしたばかりの頃はもっと冷たい感じでしたもの。」
「それは…そうかも。」

ここに着いたばかりの頃の私は鎧をつけていた。
転校ということで臆病になっていたし、特に美鶴ちゃんは
初対面から一線を画されたように感じていたので冷たくなってしまったのかも。





「なぁ、メシまだか?」
遠慮がちに台所の入り口から真弘先輩が声を掛ける。

「はい、今すぐ!」
三人で同時に声をあげ、目を見合わせて笑った。





今日は私の送別会。

私の両親が来て以来、合宿は解散しているので皆で集まるのは久しぶりだ。

あれから色々あった。

狗谷は犬戒の…慎司君の両親と対面したようだ。
これからどうなるかわからないけれど。
もう守護五家自体の柵はなくなっている。
きっとうまくいくだろう。

慎司君は犬戒の家を出て神社で暮らしている。
犬戒の家に戻るつもりはないらしい…狗谷に遠慮しているのかな?
もしかしたら言蔵慎司になるのかも。
言蔵も御言葉使いとしての役目もなくなり双子の凶事も関係なくなるだろう。
苗字が何にしろ慎司君は慎司君だ。



2006.08.26